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新谷雅弘さんと今和次郎展へ(1)


後期展示に入ったら、再度行こうと思っていた、
今和次郎(こん わじろう) 採集講義展
清洲橋仲間でご近所さんでもあるアート・ディレクターさんが、
今和次郎氏ご存命のときから活動に注目していた、
とのことでしたので、お誘いしてみました。
堀内誠一さんのお弟子さんでもあった、新谷雅弘さんです。

●新谷雅弘さん
多摩美術大学を卒後後、堀内誠一さんのお弟子さんとして、
マガジンハウスの雑誌『オリーブ』、『ブルータス』
『Hanako』などの主要雑誌のADを歴任されていた方です。
ほぼ日のここをざーーっと下へスクロールすると、
新谷さんの紹介文がでてきます。

そしていま、金沢21世紀美術館美術館にて
「Olive 1982-2003 雑誌『オリーブ』のクリエイティビティ」
が開催中です。
この展覧会のアート・ディレクションをされています。

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民俗学・考現学などの話は、ご専門の方におまかせして、
デザインについてや建築のこと、
銀座のカフェや当時の時代性など、
新谷さんとおしゃべりしながら見てみたら、
何十倍も作品の理解が深まるんじゃないかと思ったのです。

※ところで展覧会場が入っているビルは、
会場はもちろん、ビルの中でのカメラ撮影も
まったくできません。館内ポスターもダメ。
なので画像は、私が持っている
『今和次郎 最終講義』カタログ(青幻舎刊)
該当ページを、iPhoneで撮影したものです。
ちょっと暗いのですが、ごめんなさい。

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さて当日。
あいにくのお天気です、とほほ。
晴れていたら、銀座をお散歩できるんだけどなぁ、残念。
新谷さんと10:00に待ち合わせをして、いざ会場。



さむいよー。。



















菊池敦己さんのデザインですよ。ポップでキャッチーです。




















セクション1 農村調査、民家研究の仕事のコーナーへ。

新谷さん、会場入ってすぐの絵に、もう、すでに釘付け。
1-30 愛知県知多郡日間賀島村 調査スケッチ「尾張・日間賀島の漁師の家」















新谷 これ描くのにね、たぶん1時間とか1時間半はかかるよ。
   じっくり見て調査して回っていたんだろうね。

うーんたしかに。
時間をゆったりと確保していたんでしょう。


新谷 しかし、紙をムダにしていないなぁ、昔の人は。
   当時、カンタンに手に入らないからね、紙も。

船田 ほんとだ。言われてみれば、紙の端から端まで、
   いくつもの絵が描かれている。
   でもなぜ絵ばっかりなんだろう?
   写真でもいいのに。

新谷 写真だと、パースがかかっちゃうだろ? 
   絵だと、パースもごまかせるじゃない。
   平行に描いたっていいわけでしょ。
   さらに、強調したい部分をちゃんと描いて、
   あとは省いちゃうこともできるから。

船田 へぇーほんとだ。

新谷 でさ、描くことで覚えるわけだから。
   写真だったら、瞬間に撮れちゃうけど、
   絵だと1時間半じーっと見てる。
   向きあう時間が、違うんだよ。
   調査は、絵でなくちゃぜったいムリですよ。
   残したい“部分”があればいいわけ。
   昔の学者は、みんな描くんだよね。デッサンもうまいよ。

船田 そうか、そういうことだったんだ。
   私てっきり、写真でぱぱっと撮影したほうが、
   いろいろな調査できるとばかり思っていたんです。
   すみませ〜ん。。

館内係 (近寄ってきて)あのーちょっと。
    声を、もうちょっと。。

船田 す、す、すいません!

さっそく会話のボリューム、
注意をされてしまいました。
これは1回目。。

気をとりなおして、次へ。

1-45 恩賜郷倉建築工事設計図甲号 1:20 1:100















新谷 この右上の文字がね、建築用の字なんだよね。
   烏口(からすぐち)だしな。
   スクリーントーン貼ってるから、印刷物だなこれ。

船田 ほんとだ。これ、印刷物です。
   よくわかるなあ、私はぜんぜんわからなかった。。

1-60 漁家の窓


















1-61-①木曽・野尻の雨樋(あまどい) 1-61-②木曽・日出塩の雨樋(あまどい)

















新谷 ほんと紙をムダにしないよなあ。
   これは本にするための原稿じゃないかな。
   下絵の上にトレペで描いてるよ、たぶん。

船田 たしかに、トレペって書いてる。

新谷 根気がいる作業だよ。
   写真でとりあえず押さえておいて
   あとから描くと、ライブ感がなくなるんだよ。

新谷 見出しがデザイン的になってるだろ。
   本用に書き起こしているって文字だよな。
   見出しのまわりを囲って、
   白抜きにしてるところなんかは、
   ちょっと(安藤)広重だね。
   浮世絵なんだよな、コンポジションになってて。

えーと、右上の囲みの部分です。























※この上の画像は、広重作「大はしあけたの夕立」。
隅田川を描いた作品です。
この右上の処理、わかりますか?
こんなデザインということです。

船田 そうそう、今和次郎氏のトレペにキレイに描いている
   見出し文字って、けっこう囲みでシロ抜きとその逆とが
   多いかもしれない。それって元をたどれば
   広重だったんだ。なるほどー。

館内係 (つかつかっとやって来て)
    すみません。もう少し声を!

船田 あ、ごめんなさい。。

これ、実は3回目のお叱り。。
でもめげずません。次の展示へいきます。


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セクション2 関東大震災
ー都市の崩壊と再生、そして考現学の誕生

2-36 『本所深川貧民窟附近風俗採集』より
「本所深川の店にみられる品物と値段(2)























新川 オンナは欲しがりだよなあ、いつの時代も(笑)
   右上に「三越・白木屋・松坂屋」って書いてあるだろ。

船田 えー!だってこれ、貧民窟附近ってなってるから、
   生活かなり大変なエリアですよ。
   いま、私や新谷さんが住んでるところから、
   あまり遠くない場所なんですが。。

新谷 生活が苦しいなりにも、オシャレしたいわけだよ。
   オトコはそのへんにあるもので満足してる時代に、
   オンナは「三越」だからなあ(笑)

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たしかに、男性と女性で描かれているモノ、
女性のほうがちょっと贅沢なカンジです。
オトコの方は、比較的生活や仕事に密接なもの。
女性はオシャレっぽいものも描かれています。
オンナはなぁ、って言われるのも納得。。


係の方に、とにかく注意されまくりだったこの日。
10年分ぐらい、まとめてお叱りを受けたかも。

この回の名言は、「オンナは欲しがりなのだ」。
そうです、オンナは物欲でできているのですよ。
マガジンハウスでデザインをされていた方なら、
そのあたりはよーくご存知でしょうね。

まずは1回目は、ここまで。
続きは後日、更新予定です。


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