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やなぎみわ作『パノラマー唐ゼミ☆版』入谷にて改めて。


やっと、今朝から平熱モードに。でも、どことなく調子が悪い。頭痛がおさまらない。カラダも、だるい。食欲もあまりないし。ここで、普通の生活に戻ってしまったら、おそらくまた熱が出てきそうな予感がするので、きょうも一日布団生活。でも、何件かたまっている連絡メールを送らねば。

さて、インフル発覚の前日、金曜日に観たお芝居。

[パノラマ ー 唐ゼミ☆版]やなぎみわ作
2014年1月24日(金)〜26日(日)
集合場所:台東区入谷交差点【焼鳥たけうち】17:00集合



現代美術作家・やなぎみわ さんは、写真や映像をモチーフにした作品がメインだが、ここ数年は演劇に注力されている。私は、東京近郊で上演されているものは、極力足を運んでいる。演劇人ではない、美術の方だからこそのおもしろさがある(昨年秋の小沢剛さんもそうだった)。本についても、いわゆる演劇の方とはまったく違うアプローチで面白い。特筆すべきは、衣装とメイク、女性の所作へのこだわりはハンパなく、そこも魅力のひとつ。

私が一時期、江戸川乱歩作品ばかりを読んでいたことがあり、乱歩作品にも登場するパノラマ館が舞台となっているということも、とても気になっていた。

さて、24日金曜日の夕刻。熱が下がった(と思っていた)ので、いそいそと出かけてみた、焼鳥たけうちへ。

入口には、撮影部隊やコスプレっぽい方々などがずらり。


焼鳥たけうちの横には、演奏の方々も。ちょっとした、お祭りです。


あそこに見えますのは女性ですが、同じ衣装の男性もいらっしゃいました。


女装のおっちゃんもいれば、大道芸っぽい方もいて、これが、唐組なのだろうか?! そして受付後、渡されたものは『秘密の指令書』。


中には、地図が描かれている。これを元に、このエリアをオリエンテーリングのように回るらしい。第一会場へ向かい、そこでもう一枚の地図が渡される、それを元に、最後の会場へ18:00までに向かう。ということ。では、スタート。


まずは、いちばん近くの①入谷鬼子母神。



ん? その先に、またもや奇妙な方が。なにかを読み上げている。役者さん?


そばに立っていた方によると、「まずはスペースアデュー(葬儀場)に行ってみてください」とのこと。あらま、と引き返す途中に遭遇したお姉さんたち。むー、今夜は一体、何が始まるのやら。


スペースアデューに到着。ここは、葬儀場です。そうそう、この女性の雰囲気こそ、やなぎさんのお芝居に出てくる案内嬢。いいですねー。


案内されるまま2階へ行くと、パノラマ館のジオラマが展示されていた。とても精巧な造り、圧倒。このジオラマや、2階奥で上映していたパノラマの映像も、今回のプロジェクトのコンテンツのひとつ。









さて。ここで渡された次なる会場までの地図によると、入谷鬼子母神のすぐそばではないか。これは迷路、迷宮に入り込んだような感覚。ここ、葬儀場スペースアデューで棺桶(本物が展示されていたらしい)を見ることができなかったが、次のスポットへ移動。うろうろしながら、日東ジムへ。ボクサーらしき方から「この奥は、行ってはだめなのです、この先へ移動してください」との指示が。しかたなく、東郷寺へ。


この方以外にも、道の途中には案内係の役者さんが出演される衣装のまま立っていて、役さながらのセリフなどをしゃべっていた。街をあげて迷路を使った演劇祭のようで、とても楽しい。東郷寺とヤング軒をまわり、最終目的地へ。

薄暗くなってきたが、よくよく見ると廃校になった小学校跡のようだ。旧坂本小学校。ここは、唐十郎さんの母校だとか。唐組の芝居に、金のマントをはおった女性の先生がしばしば登場するらしいのだが、そのモデルになった方がこの小学校に実在していたらしい。界隈では超有名人だったらしい。


『坂本町会音楽倶楽部発表会』との看板が出ていたが、なんと、このような名目で、今回開催していたそうだ(オフレコ)。


さきほどお会いした、お姉さんたち。キレイだなあ。さて、会場は。まさに体育館。裏手の校庭では、小学生たちがフットサルのトレーニング中で、外からその声がばしばし聞こえていた。それもまた、よし。



寒い、とにかく寒かった。実は暖房機器が壊れていたらしい。だから、ホッカイロを配布したようだった。町中でお会いした役者さんたちが、ずらり登場。

お芝居の内容は、パノラマ館に日清戦争の戦争画を描く画家と、売れない詩人、戦争で手柄を立てた一等兵らによる、時代と浅草・上野の繁華街、美術と見世物などが混沌と交わる内容。上演後は、やなぎみわさんがこの作品を書くにあたって、とてもインスピレーションを受けたという本「美術という見世物 油絵茶屋の時代 (講談社学術文庫)」の著者、木下直之さんとの対談も行われた。木下直之さんの著作、とても面白そうだったので、すぐに入手した。


『美術という見世物 油絵茶屋の時代』 (講談社学術文庫) [文庫]
木下直之 著


繁華街、その地と人の歴史と記憶、戦争と欲、それらが交差する見世物小屋、パノラマ館。といったところでしょうか。謎ですかね、わかりにくくてすいません。

ゲストの木下直之さんは、兵庫県立近代美術館の学芸員を経て、東京大学教授。専門は、文化資源学という方。「現実と虚構、その対比がいくつもちりばめられていて、面白かった」と語られていた。つまり、パノラマ館もいったん中へ入るとそこは虚構に囲まれた世界。さらに、登場する絵描きが2人いるのだが、ひとりは依頼された戦争画、つまり虚構を描こうとし、もうひとりはその戦場をそのまま(荒れていない状態で)描きたいと対立する。そして、戦場から帰還した一等兵、原田重吉は日清戦争で手柄を立て軍神に祭り上げられるが、その後見世物小屋でかつての自分・原田重吉一等兵を演じることになるという、現実と虚構、パノラマ館の壁に描いている絵と、その向こう側はちがうという対比。

入谷という街も、まるで魔法の国のようだった。街がすでに、現実なのか虚構なのか、古いお店や懐かしいものにあふれたところで、とても魅力的なところ。街にうろうろしている役者さんに囲まれると、ここは現実なの?ニセモノなの? 私はどこにいるの? な感覚に陥りそうで(インフルエンザの前兆?)。そして会場に到着すると、その外から聞こえる現実らしきサッカー少年たちの声。これらを、木下さんは、面白がっていたようだ。

入谷をあとにしたのが20:30。寒い、悪寒、頭痛、ふしぶしの痛み。まずいなあ、とふらつく足で、人形町から意識もうろうのまま帰宅。まだ、萬年橋に灯りがともっていた時間。


そしてこの翌日、インフルエンザA型判定であった。

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