かないくん
谷川俊太郎 作
松本大洋 絵
発行:東京糸井重里事務所
中2女子に聞かれた、「なんでこの絵本、買おうと思ったの?」。
んー、簡単に言うと、読みたかったから。理由は、2つか3つあるな。
この本の発売は、1月末ぐらい、ついこの前だった。本が発売になるちょっと前に、私の同業の友だち、なくなったでしょ。私が、黒い服をひっぱり出してきたの、覚えているよね。去年の11月にお見舞いに行ったの、覚えている? で、その人の存在が(少なくとも)不在になって、記憶だけになったことが、かなり大きいかも。
あなた中二だから、身内がなくなったり友だちがなくなった体験がこれまでないだろうから、「死ぬ」ことについてピンとこないだろうけど。大人だって、実はあまりピンとこないものだよ。
あと、お正月に帰省した際に、親の老いを感じたのがね。おじいちゃんがもう、ずいぶん長く糖尿病を患っているのは、知っているでしょ。
で、総合失調症といわれているおばあちゃん。おばあちゃんはお料理もままならないぐらいになっていたでしょ。おフロだって入るのがもう面倒になっている。口の周り、カサカサしていたでしょ。あれは、単なる乾燥じゃなくて、身繕いが、もう面倒になってきているのだと思う。人は変わらない部分もあれば、変わってしまう部分もある。老いは、だれもが変わってしまう部分だから。
それらが、本を買おうと思ったきっかけかな、思えば。
--------------------------------------
ゆっくり読んでみた。そうか、こういう内容だったのか。谷川さんが、子どもの頃に体験した、クラスメートの死についての話だった。
これを読み終わり、そういえば私、高校3年生の冬にクラスメートを失ったんだった。そのことを思い出した。
彼女は、心臓の病気を患っていた。彼女とは小学校も同じで、小さな頃から心臓が弱く、体育の時間は、激しい運動ができなかった。でも、本当は運動が大好きで、なんでもすぐできちゃうような人だったから、「もったいないなあ」と思っていた。
美人で男の子にも人気だし、ほがらかだし、勉強もよくできる。病気以外は、有り余るほどのたくさんのものを持っている彼女、とてもうらやましかった。
中学に入学すると、私はソフトテニス部に入部し、彼女は同じ部のマネージャーとして入部した。一緒に球拾いをしたり、ストップウォッチを持って練習メニューを測ってくれたり、とても気働きのできる人だったから、地域ではけっこう強いチームになり、全道大会にも出場できたほど。
その後高校は地元で進学し、私も彼女も同じテニス部に入部し、中学の頃と同じように毎日練習し、彼女もマネージャーとして活躍していた。
心臓の様子はあまり変わらずすぐれなくて、体育の授業には参加できない。本人は、あまり気にしていないようだったが、つらかったかもしれないな、今思うと。
そして、高校3年に。私は、受験を年明け2月に控えた大晦日に、仲の良い男子2人と彼女と4人で、初詣に出かけた。私は、夜中のお出かけはその時初めてのことだったから、かなりドキドキだったことを覚えている。
でも、親は「あの3人が一緒なら、いいよ。行っておいで」と、送り出してくれたっけ。4人とも志望校は別だが札幌の大学を目指していたので、願い事をして、それぞれの家に帰宅した。
北海道は、冬休みが長い。年が明けて、1月末の冬休みが終わる頃、まもなく大学受験という時期だった。彼女がなくなったという連絡を受けた。
ついこの前、一緒に初詣に行って、大学合格を祈願して、札幌で遊ぼうよ、と言っていたのに。
人の命って、わからないし、ふっと消えてしまって、それは、だれかがどうすることもできないのだろうな。
終わりなのか、始まりなのか、どっちもありなんだろうな。この本を読み終わったときに、感じたこと。つまり、また会えるわけだな、あっちの世界で、と。
ーーーーーーーーーーーー
●『かないくん』についてのくわしくは、こちらにまとまっています。ほぼ日のサイトです。
●さらに、『かないくん』の作者であるお二人のお話しは、こちらに読みやすくまとめてあがっています。
●またまた、『かないくん』ができるまでのことは、ここに記述されています。何回かにわけて、編集を担当された方がていねいに書いています。ほぼ日は、ていねいだな。
すべての人が、しっくりくる本ではないとは思いますが、もし少しでも気になる方がいたら、手にとってみてもいいと思います。ぜひ。
コメント
コメントを投稿